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為替差損益の計算

※この内容は、あるクライアントに為替差損益の計算方法を提案したときのものです。既知の方法かもしれません。会計の知識のある方に内容を検証していただいたわけでもなく、単なるアイデアにすぎないことを、ご承知おきください。

為替差損益は、外国通貨、外貨預金、外貨建て債券債務について計算する必要があると思います。計算の理屈は同じなので、外貨建ての売掛金、未収金、買掛金、未払金、預り金、それに外国通貨、外貨預金などに適用できる計算方法を考えました。当期末残高が合うように為替差損益を逆算します。

為替差損益＝当期末残高－前期末残高－当期発生額＋当期消込額

外貨額では「前期末残高＋当期発生額－当期消込額＝当期末残高」となりますが、円貨額は換算レートの変動によって合わなくなりますので、その差額を為替差損益にして、「前期末残高＋当期発生額－当期消込額＋為替差損益＝当期末残高」を成立させます。ただし、買掛金、未払金、預り金は負債なので、差益と差損が反対になります。

売掛金や買掛金などは、発生と消込が対になっているので、１件ずつ為替差損益を計算できますし、通常はそうしていると思いますが、預金の場合、状況は複雑です。入金と出金にあまり因果関係がなく、お金を色分けして管理するわけにもいかないので、 １件ずつ考えようとすると混沌とします。前月末残高は押さえておかなければなりませんが、この計算方法なら、１件ずつ過去にさかのぼって調べなくて良いので、負担は少なくなると思います。

１件ずつ計算するのと同じです

当期の売掛金の為替差損益

１件ずつ計算

A		a1 - a0
B		b1 - bs
C		ce - c0
D		de - ds
		(a1 - a0) + (b1 - bs) + (ce - c0) + (de - ds)

まとめて計算

前期末残高（－）		a0 + c0
当期発生額（－）		bs + ds
当期消込額（＋）		ce + de
当期末残高（＋）		a1 + b1
		- (a0 + c0) - (bs + ds) + (ce + de) + (a1 + b1)
		= (a1 - a0) + (b1 - bs) + (ce - c0) + (de - ds)

１件ずつ為替差損益を計算し合算しても、まとめて為替差損益を逆算しても、結果は同じになります。

例

EUR売掛金

日付	換算レート	請求額	円貨額	消込額	円貨額	残高	円貨額
2017/05/31	135.28					4,909.68	664,181
2017/06/02	135.27	635.13	85,914			5,544.81	750,046
2017/06/04	135.28			450.17	60,898	5,094.64	689,202
2017/06/08	135.27	717.69	97,081			5,812.33	786,233
2017/06/09	135.28			564.73	76,396	5,247.60	709,895
2017/06/11	135.30	801.34	108,421			6,048.94	818,421
2017/06/12	135.31			680.63	92,096	5,368.31	726,386
2017/06/13	135.32			714.56	96,694	4,653.75	629,745
2017/06/16	135.32			760.57	102,920	3,893.18	526,825
2017/06/17	135.33			778.52	105,357	3,114.66	421,506
2017/06/19	135.34	561.53	75,997			3,676.19	497,535
2017/06/19	135.34	541.34	73,264			4,217.53	570,800
2017/06/20	135.33	468.51	63,403			4,686.04	634,161
2017/06/21	135.33			454.94	61,567	4,231.10	572,594
2017/06/27	135.32			801.34	108,437	3,429.76	464,115
2017/06/30	135.31					3,429.76	464,080
		3,725.54	504,080	5,205.46	704,365

	外貨額	円貨額
前期末残高（－）	4,909.68	664,181
当期発生額（－）	3,725.54	504,080
当期消込額（＋）	5,205.46	704,365
当期末残高（＋）	3,429.76	464,080
為替差損益		184

→ その他の例を表示

為替差損益計算書

売掛金	前期末残高	当期発生額	当期消込額	当期末残高	為替差損益
EUR	664,181	504,080	704,365	464,080	184
GBP	201,315	684,571	313,569	572,535	218
USD	731,171	501,813	776,732	456,017	-235
	1,596,667	1,690,464	1,794,666	1,492,632	167
買掛金	前期末残高	当期発生額	当期消込額	当期末残高	為替差損益
EUR	69,937	341,176	138,346	272,760	7
GBP	859,848	429,802	620,775	669,327	-452
USD	184,685	156,473	143,635	197,443	80
	1,114,470	927,451	902,756	1,139,530	-365
外貨預金	前期末残高	当期発生額	当期消込額	当期末残高	為替差損益
EUR	351,707	704,365	138,346	917,779	53
GBP	917,376	313,569	620,775	610,533	363
USD	437,806	776,732	143,635	1,070,695	-208
	1,706,889	1,794,666	902,756	2,599,007	208
	前期末残高	当期発生額	当期消込額	当期末残高	為替差損益
売掛金	1,596,667	1,690,464	1,794,666	1,492,632	167
買掛金	1,114,470	927,451	902,756	1,139,530	-365
外貨預金	1,706,889	1,794,666	902,756	2,599,007	208
					10

売掛金	1,690,464	／	売上＋税	1,690,464
外貨預金	1,794,666	／	売掛金	1,794,666
売掛金	167	／	為替差益	167
原価＋税	927,451	／	買掛金	927,451
買掛金	902,756	／	外貨預金	902,756
為替差損	365	／	買掛金	365
外貨預金	208	／	為替差益	208

※未収金、未払金、預り金なども、同じように計算できます。

あとがき

以上がクライアントへの提案でした。理解を助けるために「為替差損益を逆算」と説明していますが、売掛金や買掛金などは、「１件ずつ計算」も、「まとめて計算」も、内容的にたいして変わりません。先に合計してから為替差損益を計算するか、個別に為替差損益を計算してから合計するか、くらいのものです。例えて言うなら、買い物をしたときの消費税の計算で、商品ごとに消費税を計算して合計するか、税別金額の合計から消費税を計算するかの違いと似ています。これらの計算を、小数部を伴う実数で行うなら、結果は同じでしょう。

しかしながら日本の会計では１円単位で計算するので、個別に為替差損益を計算してから合計すると、数円の誤差を生じて残高と合わなくなることがあります。私の提案した方法では、帳尻を合わせて誤差を生じないようになっています。

外貨預金の為替差損益の計算には異論があるかもしれません。感覚的に、計算方法が違うと思うかもしれません。簡便のために預り金について考えてみます。

(USD預り金)

日付   換算レート          預り金額          支払金額              残高
-----------------------------------------------------------------------
05/31  110.75                                            $0.00       \0
06/10  110.71      $100.00  \11,071                    $100.00  \11,071
06/22  110.74                        $100.00  \11,074    $0.00       \0
06/30  110.71                                            $0.00       \0
-----------------------------------------------------------------------
                   $100.00  \11,071  $100.00  \11,074

                                                        外貨額   円貨額
                                     ----------------------------------
                                     前期末残高（＋）    $0.00       \0
                                     当期発生額（＋）  $100.00  \11,071
                                     当期消込額（－）  $100.00  \11,074
                                     当期末残高（－）    $0.00       \0
                                     ----------------------------------
                                     為替差損益                     \-3

預り金は負債なので、差益と差損が反対になることに注意してください。この例の場合、3円の為替差損が生じています。預り金11,071円に為替差損3円が生じて11,074円になり、会計上は3円の損をしたということです。この例に合わせて外貨預金も考えてみます。

(USD預金)

日付   換算レート            入金額            出金額              残高
-----------------------------------------------------------------------
05/31  110.75                                            $0.00       \0
06/10  110.71      $100.00  \11,071                    $100.00  \11,071
06/22  110.74                        $100.00  \11,074    $0.00       \0
06/30  110.71                                            $0.00       \0
-----------------------------------------------------------------------
                   $100.00  \11,071  $100.00  \11,074

                                                        外貨額   円貨額
                                     ----------------------------------
                                     前期末残高（－）    $0.00       \0
                                     当期発生額（－）  $100.00  \11,071
                                     当期消込額（＋）  $100.00  \11,074
                                     当期末残高（＋）    $0.00       \0
                                     ----------------------------------
                                     為替差損益                      \3

外貨預金のほうでは3円の為替差益が生じます。預り金で生じた為替差損が、外貨預金では為替差益になって相殺されます。預り金（負債）の分だけ外貨預金（資産）もあったのですから、差益と差損が同額になるのは当然です。もし外貨預金の為替差損益を0円と計算してしまうと、預り金の為替差損だけが残って、損をしたことになってしまいます。他人のものを預かっただけで損得が生じては困りますね。外貨建て債権債務の為替差損益の計算と同じ方法で、外貨預金の為替差損益を計算する必要があると思います。

外貨を円貨に換算するだけでなく、実際に外貨を売って日本円を得ることがあります。あるいは日本円で外貨を買うことがあります。その際の差損益は、為替手数料のことや、会計上の換算レートと実際の為替レートの違いなどを考えると混乱しますが、上記の外貨預金の為替差損益の計算とは別に、グロスで為替差損益として計上するのが妥当と思います。

USD預金から、会計上の11,074円に相当する100ドルを売り、
預金10,961円を得た場合

預金      10,961円 ／ 外貨預金  11,074円
為替差損     113円 ／
               ↑
       ここには為替手数料や
       換算レートによる差額が
       含まれている。

※仮に、会計上の換算レートを110.74、銀行の交換レートを
　為替レート 109.86 － 為替手数料 0.25 ＝ 109.61として

為替差損益の概念からするとあり得ないことですが、会計上の換算レートと銀行の交換レートが異なる場合、外貨を買うときにも為替差損益が生じるのはしかたないでしょう。

11,011円でUSD 100ドルを購入して預金から代金を払い、
会計上の外貨預金11,074円分を獲得した場合

外貨預金  11,074円 ／ 預金      11,011円
                   ／ 為替差益      63円

※仮に、会計上の換算レートを110.74、銀行の交換レートを
　為替レート 109.86 ＋ 為替手数料 0.25 ＝ 110.11として

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